世界遺産マイスターのブログ

世界遺産関連のブログです。世界遺産検定の受講の際に役立つ内容にしたいと思っています。

【基礎編】世界遺産におけるシリアル・ノミネーション・サイトとは

こんにちは。

 

今回は、シリアル・ノミネーション・サイトについて説明します。

現在の世界遺産のトレンドの一つなので、世界遺産検定の受講を検討される方は、前に説明したトランスバウンダリー・サイトと同様に、早めに理解しておきたいテーマです!

 

 

シリアル・ノミネーション・サイトとは

同一の文化や歴史的背景、または自然環境などが共通する資産すべてを、一つのものとして登録した世界遺産の事です。

 

【シリアル・ノミネーション・サイトのメリット】

①複数の資産を一括りで登録する事により、『世界遺産が増えすぎている問題』への対策になる。

②それ一つでは世界遺産登録が難しい物件でも、『全体で一つの遺産』と捉えることにより、その遺産価値を高められる。

などが挙げられます。

 

また、全体で一つの遺産という解釈が可能になったことにより、ピラミッドや万里の長城などのような『これぞ世界遺産』的なモニュメントを保有していない国でも、世界遺産登録を進めやすくなり、特定国への偏りを無くすという効果もあります。

 

トランスバウンダリー・サイトとの違い

構成資産が国境を越えて存在する=トランスバウンダリー・サイト

構成資産が同一国内に存在する=シリアル・ノミネーション・サイト

の切り分けでOKです。

 

主なシリアル・ノミネーション・サイト

3つの代表的なシリアル・ノミネーション・サイトで登録された世界遺産を紹介します。

 

明治日本の産業革命遺産

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・近代化の礎となった産業遺産群

・重工業への転換を代表する重要拠点

これに該当する23種の資産は、日本が急速に近代産業化を遂げた例証であり、同一の物語性のある共通資産です。これらを一つの世界遺産として登録になりました。

良くも悪くも、何かと話題にもなった世界遺産でもあり、これがシリアル・ノミネーション・サイトの最も身近な例と言えるのではと思います。

 

②ロワール渓谷(フランス)

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ここもシリアル・ノミネーション・サイトの代表例として有名な世界遺産です。

ロワール川流域の渓谷に数多くのお城が点在しています。これは、ルネサンス期に国王や貴族たちが競うように優美な城を建てまくったからなのですが、これら全てを共通の資産価値を有するものとして、一つの世界遺産として登録されました。

(余談ですが、私にとって「人生でもう一度訪れたい世界遺産」のベスト2位がロワール渓谷です)

 

③カムチャツカ火山群(ロシア連邦

 シリアル・ノミネーション・サイトを代表する世界遺産は自然遺産にもあります。代表的ものの一つとしてカムチャツカ火山群があります。

カムチャツカ半島には300以上の火山があり、活火山だけでも10を超えております。それゆえに、「火山の博物館」ともいわれておりますが、これらすべてを「カムチャツカ火山群」という名称で、一まとめにして世界遺産登録されております。

 

 

シリアル・ノミネーション・サイトにて思うこと

以前、産業革命遺産が世界遺産に登録された時に、「世界遺産がバーゲンセール中」とか、ネットで悪口を書かれていることを見た事があります。

確かに、シリアル・ノミネーション・サイトとして登録された世界遺産は、その一つ一つは小粒なものが多いと思います。

だけど、単一で登録された世界遺産を一枚の絵画だとしたら、シリアル・ノミネーション・サイトで登録された世界遺産はパズルのようなものです。

そのため、パズルのピース一つを見ても遺産本来の価値が見えにくいかもしれません。小粒に見える部分もあると思います。

だけど、パズルの完成形から浮かび上がる「物語」を読み取る事こそが、シリアル・ノミネーション・サイトならではの魅力だと思っております。

 

今回は以上です。

さようなら。