【番組紹介】2/3放送の「世界遺産」の舞台であるグヌン・ムル国立公園について
こんにちは。
TBS系の「世界遺産」ですが、今週はマレーシアの自然遺産であるグヌン・ムル国立公園です。
それほど有名な世界遺産ではないと思うが、地球が作り出した奇跡ともいうべき、魅力的な世界遺産です。
簡単ですが、グヌン・ムルの特徴について紹介します。番組を楽しむ際の参考にしてもらえると幸いです。
※前回のワディ・ラムはこちら
しかし、年明け1月ぐらいは、景気よく日本の世界遺産でもやるのかなと思っていたが、いまいちチョイスが分からない番組だと改めて思いました。
グヌン・ムル国立公園/マレーシア
登録基準/(ⅶ)(ⅷ)(ⅸ)(ⅹ)
自然遺産の登録基準ですが、
(ⅶ)自然美
(ⅷ)地球の歴史
(ⅸ)独自の生態系
(ⅹ)絶滅危惧種の生息域
の全4項目です。
グヌン・ムル国立公園は、自然遺産登録に必要な4項目をすべて満たしている世界遺産です。
ちなみに、日本には4件の自然遺産があるが、この4項目をすべて満たしている自然遺産はありません。
※登録基準の詳細は以下
グヌン・ムル国立公園の特徴
特徴①:カルスト地帯
ボルネオ島北部のムル山を中心に広がるカルスト地帯です。ムル山の標高は約2,300mなので、比較対象としては日光の山々といった感じでしょうか。
特徴②:動植物の楽園
様々な動植物の生息地です。特に約3500種の多様な維管束植物が生育し、中でもヤシ科の種類が豊富な事でも有名です。
また、ツバメやコウモリなどの楽園としても知られています。
特徴③:世界最多の洞窟群
カルスト地帯の特徴の一つなのですが、ムル山は洞窟が多い山としても有名です。
中でも、サラワク洞窟は世界最大の洞窟として知られています。
全ての洞窟を繋ぎ合わせると総延長300km近くになるらしく、東京⇔仙台ほどの距離になるようです。スケールが大きすぎて、いまいちイメージしにくい。
主な特徴としては、この3つではないでしょうか。
おそらく、番組もこの辺を中心に取り上げるのではないかと思います。
最後に
補足として、カルスト地帯について説明します。
カルスト地帯とは、石灰岩が雨水や地下水などの溶食によって生じた地形の事です。
地球上には数多くのカルストの世界遺産が存在するが、その中でも代表的なものを紹介します。
シュコツィアンの洞窟群
スロベニア南部のクラス地方にある世界最大の鍾乳洞です。このクラス地方が『カルスト』の語源になりました。
アグテレク・カルストとスロバキア・カルストの洞窟群
洞窟内でライブなどをやっているらしいが、音響が良いらしいです。
フォンニャ・ケバン国立公園
ベトナムに存在するアジア最古のカルスト地帯です。
九塞溝渓谷
補足が長くなりそうなので、この辺にしておきます。
以上です。
さようなら。
【ニュース】世界遺産におけるドローンの功罪
こんにちは。
ドローン関連で2件のニュースが入りました。
良いニュースと悪いニュース、両極なのが印象的です。
①ガラパゴス諸島、外来種のネズミ駆除にドローンを初導入 http://www.afpbb.com/articles/-/3208092
②マカオの世界遺産・聖ポール天主堂跡にドローンが接触…中国人観光客が操縦=当局が破損状況調査へ(マカオ新聞) - Yahoo!ニュース https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190124-00010000-macau-cn
シン・ゴジラのセリフをパク…、引用するならば、
ドローンは、『世界遺産にとって脅威の一つとなるか、保全・保護をもたらす福音となるか』
何にせよ、使い方次第だとは思います。
以上です。
さようなら。
【コラム】「世界遺産は観光地なの?」問題について
こんにちは。
世界遺産を管理・保全していく上で、数多くの脅威が存在します。
具体的な脅威に関して、元ユネスコ事務局長 松浦晃一郎氏の名著『世界遺産 ユネスコ事務局長は訴える』では、以下の7項目に分類しています。
・自然の劣化:時間経過に伴う劣化
・自然災害:地震・火山噴火・洪水・地滑りなど
・戦争や内戦による破壊:爆撃等による破壊
・人為的な破壊:テロ行為による破壊、売買目的による遺産略奪など
・経済開発優先による脅威:保護地域の削除・縮小などを必要とするインフラ計画
・都市開発による脅威:人口増加エリアにおける諸問題。マンション乱立など
・観光事業の増加:観光客増加に伴う諸問題。ごみ問題、文化財への落書きなど
どれもが、過去から受け取った『世界遺産』というバトンを未来に渡す上で、大変深刻な脅威と認識する必要があります。
その中でも最も身近な問題といえるのは、7項目目の『観光事業の増加』ではないでしょうか。
唯一、誰しもが加害者になり得る問題とも言えます(爆弾でも作れる人ならば、加害者になり得る別項目もあるかもしれないが)
そして、この問題を考えるということは、「世界遺産って観光地だっけ?」という、そもそも論と向き合う事に他なりません。
今回は、このテーマについて自分の考えを述べたいと思います。
世界遺産は観光地?
この問いは、以前から議論対象になる事が多いテーマだが、基本的にはNOという意見の方が多いと思います。
「産業革命遺産」が世界遺産登録された時の「まとめサイト」を読んでも、ネガティブに捉えている意見の方が多いようです(まぁ、YES側の人は特に声を上げないと思うので、必然的に意見に偏りが出ているだけとも言えますが・・・)
また、学問対象として世界遺産と接してきた人も、
『世界遺産とは顕著な普遍的価値を有する人類の共通財産である。その定義を遵守するならば、観光地かどうかと言われたらNOと答える』
と言うのではと思います。
私個人としても、どちらかと言えばNO側です。
以前にも触れましたが、文化遺産の救出活動こそ世界遺産の原点です。
観光事業の増加が、諸問題を生み出すトリガーになりかねないならば、本来の趣旨から逸脱します。
ただし、本件はYES/NOの二択で片付けられるほど簡単な問題ではないとも思っております。
というのも、世界遺産の定義がどうとかの『建前』の話は置いておいて、現実的に観光客誘致を目的に世界遺産登録を進めてきたのは、純然たる事実だからです。
観光産業を国の重要な柱と定めた『観光立国推進基本法』が施行されてから10年が経つが、その基本計画の中に、以下の項目があります。
観光資源の活用による地域の特性を生かした魅力ある観光地の形成
その項目の中に世界遺産についての記載がある以上、それを定めた政府も、広義的には世界遺産を観光地と捉えていると判断できます。
特に、観光インバウンドは外貨獲得に直結するので、全世界の共通言語である世界遺産を観光の目玉にすることは、悪い言い方をすれば「手っ取り早い」と考えるのも当然かもしれません。
世界遺産を観光地と認めない側からは、「観光立国推進基本法なんて聞いたことがない。そんなの国が勝手にやってるだけだろ。そんなことに世界遺産を巻き込むな」という意見も出るかもしれません。
しかし、世界遺産を実際に訪れる事は、その国の文化や歴史に対する理解を深める事に繋がります。「百聞は一見に云々」を例に出すまでもなく、凡百の書物を読むだけでは得難い経験になるのは間違いないと思います。
そして、それはユネスコ憲章前文に謳っている「諸国間・諸民族間の交流を進め、文化の多様性を理解・尊重しあうことが、世界平和につながる」という内容ともリンクします。
そう考えると、観光立国推進基本法の内容と、世界遺産条約の大本であるユネスコ憲章とで、特に大きな矛盾はないように見受けられます。
考えれば考えるほど、「世界遺産は観光地なの?」問題に対する、明確な回答を用意することは困難な気がしてきます。
白黒付ける事が不可能ならば、どこかで折り合いをつけて、世界遺産の保護を大前提とした観光事業増加への対策を考える必要があるのではないでしょうか。
観光事業増加への対策
思いつくのは以下の2つです。
①入場規制
『観光客が増える事と比例して問題も増えるなら、対応可能な来客者数に制限すればよい』
理にはかなっております。
(私も含めた)無関係の外部の人間が何を言おうが、現実的に諸問題への対応を要求されるのは、地元関係者の方たちです。関係者の判断により、必要に応じて制限等は適宜行うべきと思います。
直近でも、白川郷にて入村制限、完全予約制のイベントがあるようです。
入村制限のメリット・デメリットなど、イベント後の感想を是非とも知りたい所です。
②教育
世界遺産条約にも教育の重要性が掲げられておりますが、貴重な文化遺産への落書きなどといった、万死に値する行為を行える人間が現実的にいる以上、その重要性は増していると思います。
本テーマである「観光産業増加に伴う脅威」のみならず、世界遺産が抱える問題の多くが、その根底には「遺産保護に対する無理解」があるのではと思っています。
教育によって、大切な遺産を次世代に伝えていく重要性が広まれば、やがては「世界遺産は観光地なの?」問題に対しても、自ずと最善の結論が出るのではと信じています。
最後に
教育の必要性を結論にしたが、ネットなどを通じて積極的に考えを発信する事も、それと同じぐらい重要な事だと思っています。
実は、本ブログを始めようと思った理由の一つでもあります。
今回は以上です。
さようなら
【基礎編】世界遺産におけるシリアル・ノミネーション・サイトとは
こんにちは。
今回は、シリアル・ノミネーション・サイトについて説明します。
現在の世界遺産のトレンドの一つなので、世界遺産検定の受講を検討される方は、前に説明したトランスバウンダリー・サイトと同様に、早めに理解しておきたいテーマです!
シリアル・ノミネーション・サイトとは
同一の文化や歴史的背景、または自然環境などが共通する資産すべてを、一つのものとして登録した世界遺産の事です。
【シリアル・ノミネーション・サイトのメリット】
①複数の資産を一括りで登録する事により、『世界遺産が増えすぎている問題』への対策になる。
②それ一つでは世界遺産登録が難しい物件でも、『全体で一つの遺産』と捉えることにより、その遺産価値を高められる。
などが挙げられます。
また、全体で一つの遺産という解釈が可能になったことにより、ピラミッドや万里の長城などのような『これぞ世界遺産』的なモニュメントを保有していない国でも、世界遺産登録を進めやすくなり、特定国への偏りを無くすという効果もあります。
トランスバウンダリー・サイトとの違い
構成資産が国境を越えて存在する=トランスバウンダリー・サイト
構成資産が同一国内に存在する=シリアル・ノミネーション・サイト
の切り分けでOKです。
主なシリアル・ノミネーション・サイト
3つの代表的なシリアル・ノミネーション・サイトで登録された世界遺産を紹介します。
・近代化の礎となった産業遺産群
・重工業への転換を代表する重要拠点
これに該当する23種の資産は、日本が急速に近代産業化を遂げた例証であり、同一の物語性のある共通資産です。これらを一つの世界遺産として登録になりました。
良くも悪くも、何かと話題にもなった世界遺産でもあり、これがシリアル・ノミネーション・サイトの最も身近な例と言えるのではと思います。
②ロワール渓谷(フランス)
ここもシリアル・ノミネーション・サイトの代表例として有名な世界遺産です。
ロワール川流域の渓谷に数多くのお城が点在しています。これは、ルネサンス期に国王や貴族たちが競うように優美な城を建てまくったからなのですが、これら全てを共通の資産価値を有するものとして、一つの世界遺産として登録されました。
(余談ですが、私にとって「人生でもう一度訪れたい世界遺産」のベスト2位がロワール渓谷です)
③カムチャツカ火山群(ロシア連邦)
シリアル・ノミネーション・サイトを代表する世界遺産は自然遺産にもあります。代表的ものの一つとしてカムチャツカ火山群があります。
カムチャツカ半島には300以上の火山があり、活火山だけでも10を超えております。それゆえに、「火山の博物館」ともいわれておりますが、これらすべてを「カムチャツカ火山群」という名称で、一まとめにして世界遺産登録されております。
シリアル・ノミネーション・サイトにて思うこと
以前、産業革命遺産が世界遺産に登録された時に、「世界遺産がバーゲンセール中」とか、ネットで悪口を書かれていることを見た事があります。
確かに、シリアル・ノミネーション・サイトとして登録された世界遺産は、その一つ一つは小粒なものが多いと思います。
だけど、単一で登録された世界遺産を一枚の絵画だとしたら、シリアル・ノミネーション・サイトで登録された世界遺産はパズルのようなものです。
そのため、パズルのピース一つを見ても遺産本来の価値が見えにくいかもしれません。小粒に見える部分もあると思います。
だけど、パズルの完成形から浮かび上がる「物語」を読み取る事こそが、シリアル・ノミネーション・サイトならではの魅力だと思っております。
今回は以上です。
さようなら。
【コラム】世界遺産と音楽② 鳥山雄司さんの音楽
こんにちは。
皆さんにとって、世界遺産をイメージする音楽って、どんなのがありますか?
この曲という方も多いのではないでしょうか。
The Song of Life/鳥山 雄司さん
そう。テレビ番組「世界遺産」の初期テーマ曲として有名な曲です。
壮大でドラマティックなメロディの素晴らしさ。
いつ聴いても色褪せない感動があります。
思えば、この曲に出会った事も、私が世界遺産を勉強しようと思ったきっかけの一つかもしれません。
その頃を思い出して、この曲を聴くと未だに涙が出そうになったりします・・・
最近の鳥山雄司さんですが、PYRAMIDという音楽ユニットのメンバーとしてもご活躍されてます。
このPYRAMIDというユニットですが、鳥山雄司さん、神保彰さん、和泉宏隆さんという、超豪華メンバーで構成されております。
興味のある方は、是非PYRAMIDもチェックしてください!
今回は以上です。
さようなら。
1/20放送の「世界遺産」の舞台であるワディ・ラム保護地域について
こんにちは。
日曜の午後6時より放送の「世界遺産」。
私も毎週楽しみにしています。
書物などを通じて覚えた世界遺産を、映像で味わう楽しみもあります。
もちろん、訪れた事のある世界遺産が放送されると格別な気持ちにもなります。
この辺は、世界遺産に興味を持った人の特権かもしれません。
20日に放送される「世界遺産」ですが、今回の舞台はワディ・ラム保護地域のようです。
メジャーな世界遺産ではないと思うので、聞いたことがないという人も多いかもしれません。
番組を楽しむ意味でも、簡単ではありますがこの地域について紹介します。
ワディ・ラム保護区 (ⅲ)(ⅴ)(ⅶ)
世界でも数少ない複合遺産の一つです。「月の谷」とも呼ばれ、岩のアーチや崖、さらには洞窟などといった、大自然が作り上げた砂漠特有の景観として知られています。
2万を超える岩面彫刻などが発見されており、考古学的な意味でも大変貴重な地域となっております。
また、映画のロケ地としても知られております。
巨匠デヴィット・リーン監督の不朽の名作の一つ、「アラビアのロレンス」もこの地で撮影を行いました。
また、近年の作品の中で有名なのは、リドリー・スコット監督の「オデッセイ」でしょうか。火星に取り残された男の話でしたが、月の谷で撮影したというのも、なんとも面白い話だと思います。
なお、ワディ・ラムのすぐ近くに、「隊商都市ペトラ」という有名な世界遺産があります。
この遺跡は、「インディージョーンズ/最後の聖戦」のロケ地として使われました。
ワディ・ラムとペトラ遺跡を初めとする幻想的なヨルダンの世界遺産は、映画との相性が良いのかもしれませんね。
今回はここまでです。
さようなら
【基礎編】世界遺産におけるトランスバウンダリー・サイトとは
こんにちは。
今回は、トランスバウンダリー・サイトについて説明します。
トランスバウンダリー・サイトとは
人為的な国境にとらわれない自然遺産、または近代的な国家の成立の際に国境で分断されてしまった文化遺産などを指します。
一言で言えば、2か国以上にまたがる世界遺産のことです。
トランスバウンダリー・サイトにおけるポイントは以下の二つのみです。
①関係締約国が共同で遺産全体の管理を行う事を、強く推奨されている
→代表国を選定して、その国が単独で管理する等ではありません。
②2か国以上にまたがる遺産であっても、それぞれが別々に世界遺産登録している場合、トランスバウンダリー・サイトには該当しない。
→アルゼンチンとブラジルにまたがる『イグアス国立公園』など、それぞれの国が別々に登録をした世界遺産もあります。こういったケースは、トランスバウンダリー・サイトとはみなされません。
代表的なトランスバウンダリー・サイト
①シュトルーヴェの測地弧(シュトルーヴェのそくちこ)
(ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・ロシア・エストニア・ラトビア・リトアニア・ベラルーシ・モルドバ・ウクライナ)
ドイツ出身のロシアの天文学者であるシュトルーヴェが中心となって設置した測量地です。最初は2か国のみでしたが、どんどん世界遺産の登録範囲が拡大されてきて、現在では10か国にまたがっております。
地球上に数多くの世界遺産があると言っても、さすがにこの規模のトランスバウンダリー・サイトは他に例がありません。
②ル・コルビュジエの建築作品
(ドイツ・アルゼンチン・ベルギー・フランス・インド・日本・スイス)
国境どころか、大陸を超えた世界遺産があります。トランスバウンダリー・サイトの拡大版で、トランスコンチネンタル・サイトと呼ばれておりますが、現時点で唯一これに該当するのが、ル・コルビュジエの建築作品群です。
国立西洋美術館に訪れる際に、世界的にも珍しいトランスコンチネンタル・サイトの一つという点について触れれば、少し話が盛り上がるかもしれませんね。
他にも様々なトランスバウンダリー・サイトがありますが、どれもが魅力的な世界遺産です。
1ヵ国のみで管理・運営する世界遺産より難しい点も多いと思いますが、
『ボーダーレスな世界遺産を、複数国で管理する』
それ自体に、とても意味がある事だと思っております。
今回は以上です。
さようなら
※画像引用:Wikipedia