【ニュース】「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」世界遺産推薦について思う事
こんにちは
来年の世界遺産への登録推薦地ですが、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(以下、奄美・沖縄)に正式に確定したようです。
自然遺産の場合、IUCN(国際自然保護連合)という諮問機関によって現地調査を行うのですが、正式に世界遺産登録が確定すれば、国内で5つ目の自然遺産が誕生することになります。
それ自体は喜ばしい事だと思います。
ただ、個人的には少し気になる事があります。
性急過ぎるという点です。
「奄美・沖縄」は、2018年の5月にIUCNから「登録延期」勧告が出されました。「登録延期」勧告とは、「不登録」勧告手前のものであり、早い話が、「現時点では世界遺産に相応しくない」と断言されたわけです。
この勧告が出た以上、抜本的な見直しの検討も必要になるので、「奄美・沖縄」の登録はもう少し先になると思いました。
しかし、昨年末ぐらいに「奄美・沖縄」の推薦を進めるというニュースが入った時に、「1年で何ができるの?」と少し疑問を抱きました。
着々と準備を進めていた上での判断だとは思うが、それにしても急だと感じます。
また、エリア的に察する来る方もいるかもしれませんが、政治的にも火が付きやすい場所でもあります(以下参照)。
性急に「登録」を完了させたい背景に、何か政治的理由があるのではと、少しモヤモヤしているのも確かです。
今回に限らずだが、「世界遺産と政治」について、色々と感じる事が多い(と言うより急激に増えた)ので、そのうちブログに書くかもしれません。
今回、推薦されなかった「北海道・北東北の縄文遺跡群」の関係者にとって、悔しい想いをされたのではと予想されます。
言うまでもなく、世界遺産登録のためには、地域住民を初めとした多くの関係者の協力は必要不可欠です。未来の世界遺産登録に向けて、関係者の熱が下がってほしくないとは強く願います。
少しネガティブな内容になってしまいました。
ただ、将来的に見ての「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の登録推薦に関しては全面的に賛成はしております。動植物の貴重な生息地として、国内で5つめの自然遺産に相応しい場所であることは間違いありませんので。
以上です。
さようなら
※リンク切れのため、リンク先を変更 1/19
【コラム】世界遺産と音楽①
こんにちは。
基礎知識編が続いているので、少し横道に逸れます。
音楽と紐づける事も、お気に入りの世界遺産を知るきっかけになるかなと思うので、今回は、世界遺産について歌った音楽について紹介したいと思います。
パンタナル自然保護区(ⅶ)(ⅸ)(ⅹ)
パンタナル自然保護区とは、ブラジル、ボリビア、パラグアイにまたがる世界最大の湿地です。
コウノトリやトキなど、水鳥の繁殖地として有名なのですが、この地を歌った、知る人ぞ知る音楽があります。
ブラジルを代表する(おそらくしない)バンドに、SAGRADという方々がいます。ジャンルとしては、プログレ音楽に属しますが、耳に優しいメロディは、環境音楽としても誰にでもオススメできる良質な音楽です。
彼らの音楽に、タイトルもそのままなのですがパンタナルという楽曲があります。まずは曲を聴いてみてください。100の言葉でパンタナルという世界遺産を説明されるよりも、この1曲を聴いた方が、その魅力を感じ取られるはずです。
自然遺産って、覚えるのが難しいと思うのですよ。世界遺産を学びたいという人の大半が文化遺産を中心に覚えると思うので。
もし、自然遺産を覚えるのが困難という方がいましたら、この音楽を好きになれば、いやでもパンタナルはお気に入りの世界遺産になるのではないかと思います。
SAGRADOの音楽はこれだけではありません。大航海時代を思わせる壮大な世界観や、宇宙の広がりを連想させる音楽、そして世界遺産に想いを馳せる美しい旋律。
生きるということは、人生において埋めるべきパズルのピースを探す作業だとしたら、間違いなくSAGRADOの音楽は、「人生の1ピースに」なるだけの力を持っていると思います。
この表現が大げさでないということを誰か一人でも知ってもらえるならば、僕も嬉しいです。
今回は以上です。
さようなら。
【基礎編】文化的景観とは
こんにちは。
今回は、文化的景観と呼ばれる概念について説明したいと思います。
文化的景観を説明する前に、世界遺産の種類についておさらいをしますが、世界遺産は、文化遺産、自然遺産、複合遺産の三つにカテゴライズされます。
文化遺産として登録されるのか、あるいは自然遺産として登録されるのかは、10項目の登録基準をクリアしたかどうかによって判断されるという点も、以前に触れた内容です。
ただ、富士山のように、山への信仰があるからこそ、北斎の浮世絵など色んな文化が生みされたという意味では、文化遺産なのか自然遺産なのか一言では言えないものもあります。
このように、世界遺産を知れば知るほど、自然遺産の条件はクリアしていないものの、単純に文化遺産にのみカテゴライズしてよいのか疑問に抱く文化遺産がたくさんあると思います。そして、これこそが文化的景観というものです。
文化的景観について
この概念が採択されたのは1992年のことです。米米CLUBの「君がいるだけで」とか、エリッククラプトンのTears In Heavenがヒットした時代と考えると、自分と同世代の人からしたら、そこまで昔に感じないのかも。
世界遺産とは、1978年にスタートして以降、西欧諸国への偏りをなくすために様々な方策がとられて、その都度カスタマイズされてきました。この概念が誕生したのも、そういった背景があったと言えます。
アジアやオセアニア、そしてアフリカなど、自然との共存によって育まれた文化が多いエリアでは、この概念が適用されたことにより、数多くの遺産が世界遺産として認められる事になりました。
その第一号が、ニュージーランドにある「トンガリロ国立公園」です。先住民マオリ族の聖地として有名な火山帯ですが、1992年、世界で最初に認められた文化的景観でもあります。
文化的景観の三つのカテゴリ
文化的景観は以下の三つにカテゴリー分けされています。あえて要点だけ書きます。
①意匠された景観:庭園や公園
②有機的に進化する景観:農耕地
③関連する景観:聖地
どの遺産がどのカテゴリーに分けられているか、世界遺産条約上、特に明確にはなっていないようです。
なので、〇〇の聖地として有名とか、今も生き残っている伝統的農耕地とか、そういったものは文化的景観の一つといった感じで、アバウトに捉えてもらってよいと思います。
最後に、自分の大好きな文化的景観を紹介します。
この地を愛したイギリスの絵本作家であるビアトリクス・ポターは、この湖水地方を舞台に、世界的に有名な作品を作りました。
今年、映画にもなったピーターラビットです。
その雄大な自然があるからこそ、世界的に愛される作品が生まれた。まさに、文化的景観の代表例と呼べるのではないでしょうか。
映画も面白かったので、興味のある方は、是非見てくださいね!
今回は以上です。
さようなら。
【基礎編】世界遺産登録に必要な10個の登録基準について
こんにちは。
今回は、世界遺産登録の登録基準について説明したいと思います。
上に貼ってある以前のブログにも書きましたが、世界遺産と呼ばれる為には、顕著な普遍的価値を持つと判断される10項目の評価基準があるため、これから説明する10項目のうち、何か一つでも基準をクリアする必要があります。
評価基準とは
細かく書くのも面倒なので、10項目の詳細について、日本ユネスコ協会に書かれた詳細を貼ります。以下を見てください。
その内容を以下に要約します。
【文化遺産】
(ⅰ)人間の才能:よくこんなの作ったな!やっぱり人間て凄くね?的な遺産
(ⅱ)文化交流:A国とB国の境界線にあるため、C国独自の文化がそこにある的な遺産
(ⅲ)文明の発展:今は廃墟だが、以前はそこに文明があったことを忍ばせるロマン溢れる跡地
(ⅳ)建築の発展:その時代の代表的な建築物
(ⅴ)独自の集落:文字通り集落。今も残るが、存続が危うい
(ⅵ)大きな出来事:歴史上の大きな出来事を今に残す遺産
【自然遺産】
(ⅶ)自然美:こんな美しい景色は滅多にないよね的な遺産
(ⅷ)地球の歴史:ここの地層から古代の恐竜の骨が見つかった
(ⅸ)独自の生態系:こんな動物は他にはいないから、生態学の研究をしたくなる遺産
(ⅹ)絶滅危惧種の生息域:絶滅寸前の動物がいるので、大切にしましょう的な遺産
分かりやすさを優先したので、アバウトな書き方をしてますがご了承ください。
なお、いくつか説明が必要なものを、以下に書きます。
(ⅵ)について
人類の歴史上の出来事と言っても、立場が変われば捉え方も変わるのが歴史なので、これの登録はかなり慎重さが必要になっています。
そのため、(ⅵ)に関しては「ほかの基準とあわせて用いることが望ましい」と明記されています。
例外的に、(ⅵ)のみで登録されている遺産もありますが、広島平和記念碑(原爆ドーム)やアウシュヴィッツ・ビルケナウ(ナチス・ドイツの強制絶滅収容所)などに代表される、人類の過ちを後世に残すための教訓とする遺産のみです。
世界遺産条約にて厳密に定義はしていないが、これらを負の遺産と呼んでいます。
(ⅰ)と(ⅳ)の違い
「(ⅰ)が人間の才能で、(ⅳ)が建築と言われても、どう違うの?才能があるから歴史的な建築物を作れるんでしょ?」という疑問もあるかもしれません。
確かに共通項の多い基準と言えます。そのため、どちらの登録基準もクリアしている遺産は地球上に数多くあり、有名どころで言えば、モン・サン・ミシェルもヴェルサイユ宮殿もフィレンツェも、全て評価基準の(ⅰ)も(ⅳ)もクリアしています。
切り分けが難しい所ではありますが、(ⅳ)の評価ポイントとして、建築技術の「代表的な段階」という点が重視されます。そのため、どんなに傑作的な建築物であったとしても、その時代における代表的なものか否かによっては、(ⅳ)の評価基準をクリアしないケースもあります。
また、(ⅰ)のみで登録されている世界遺産が極めて少ない点も特徴的と言えます。現存する世界遺産は1000個を超えたが、(ⅰ)のみで登録されているのは、インドのタージ・マハル、オーストラリアの「シドニー・オペラハウス」、カンボジアの「プレア・ビヒア寺院」の3つのみです。
どれも世界遺産of世界遺産です。この辺は、決して建築史の発展段階における代表例ではないが、人類の才能を示す傑作に違いはないと判断された数少ない例と言えるのかもしれませんね。
説明した10項目ですが、文字的に暗記するのは効率的ではないと思います。気になる世界遺産を調べる際に、「この遺産は(ⅱ)と(ⅳ)が認められたのか」といった感じで、その都度、調べる習慣をつけると、いつの間にか覚えてしまうはずです。
なので、10個の基準は、あくまでも世界遺産を理解する上での補助的なものとして活用ください。
なお、大体の世界遺産についてWikipediaで調べると、登録基準についての説明も載っていますので、それも参考になると思います。
今回は以上です。
さようなら。
【コラム】キン肉マンと世界遺産
こんにちは。
突然ですが、皆さんは、キン肉マンは読んでいますでしょうか?
名前すら知らないって人はいないと思いますが、キン消しブームで社会現象を巻き起こした有名漫画です。
この漫画、30年以上の歴史のある漫画にも関わらず、多くのファンの人が、
漫画の全盛期が現在!
と口を揃えて断言するというとんでもない漫画なのです。
簡単にストーリーを説明をすると、本作の世界には超人と呼ばれる種族が存在。そして、正義超人や悪魔超人、さらには完璧超人などと分類された超人が、様々な理由で闘争を繰り広げるというストーリーです。
当初は、どちらかと言えば勧善懲悪的な世界観でしたが、現在は複雑なイデオロギー闘争の様相を呈するなど、ここ数年は物語の深みも増してきています。
なぜ、このような話をするかというと、実はキン肉マンの闘いの舞台って、半分ぐらいが世界遺産なのです(笑)
・・・?
なんで?
って思う人もいるかもしれませんが、地球の命運をかけた戦いを行う上で、世界遺産ほど、キン肉マンの戦いの舞台に相応しい場所が存在しないからです!
以上の理由より、気軽に世界遺産を学ぶ入り口として、私はキン肉マンを読むことをお勧めしているのですが、ここからは、いくつか代表的なものをご紹介します。
オーストラリア大陸の中央に位置するウルル。
日本では「エアーズロック」の名前の方が知られているかもしれません。
アボリジニの聖地として世界でも数少ない複合遺産の一つですが、この地はアボリジニの聖地でもあると同時に超人の聖地でもあります。
というのも、キン肉マン史上、特に激しかった闘いである完璧超人始祖編における、最終決戦の地がウルルでした。
超人閻魔と悪魔将軍という、敵に回したら絶望的な二人による、互いの信念をかけた戦い。間違いなく漫画誌に残る激闘だったと思います。
ちなみに、超人閻魔の口癖は「グロロ」です。この口癖が、ウルルの語源になったのは通説です。この辺は、世界遺産を学ぶ上での基礎中の基礎です。
②サグラダ・ファミリア(スペイン)
カタルーニャ地方の芸術運動モデルニスモ(アールヌーヴォー)の代表であり、曲線美を描く天才建築家であるアントニ・ガウディ。
サグラダ・ファミリア贖罪聖堂を含む、彼の一連の主要作品は「アントニ・ガウディの作品群」として、1984年、世界遺産に登録されました。
しかし、キン肉マンファンにとって、この地は超人が死闘を繰り広げた戦場に他なりません!
完璧超人の中でも謎の多いサイコマンと、悪魔超人の幹部の一角であるプラネットマンが激闘を繰り広げました。
ちなみにサグラダ・ファミリアには、キン肉マンという漫画における最重要キーワードである「超人」の秘密が隠されています。今後の展開次第によっては、再度戦いの舞台になる可能性もありそうですね。
なお、上の写真を見てもわかるように、基本的にこの漫画において世界遺産の扱い方は雑です。
神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ2世によって建てられた城塞も、キン肉マンの戦いのリングの一つです。
キン肉マンの中でも特に人気の高かったシリーズである「王位争奪戦編」の主要メンバーが、本シリーズより突如参戦していますが、その中でも特にキン肉マンを苦しめた強敵がキン肉マン・ゼブラです。この超人が、デル・モンテにて戦っています。
実は、この戦いは現在もリアルタイムで行われてまして、結末はまだ誰にも分かっていません(2018年9月末現在)。
今のところだと、ゼブラ殺されそうです!
もし、本ブログで勝敗の行方が気になった方は、まだ間に合いますので、是非一読ください。
なお、この辺は世界史の話になるのでしょうか。フリードリヒ2世は、歴史に名を残している同名人物が二人います。神聖ローマ帝国の皇帝と、プロイセン王の二人です。
実は二人とも後に世界遺産に登録される建物を建造しています。
神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世は、今回紹介したカステル・デル・モンテ。
そしてプロイセン王のフリードリヒ2世は、ドイツのポツダムに現存するサンスーシ宮殿です。
上の2つの世界遺産は、世界遺産検定の二級あたりでも出る範囲の話なので、初耳の人は、これをきっかけに覚えておいてくださいませ。
他にもたくさんの世界遺産が出てくる漫画なので、「ここは世界遺産だよね」、あるいは「ここは違うよな」とか、戦いの舞台となっている場所を調べながら読むのも面白いかもしれません。
今回は以上です。
さようなら
【基礎編】真正性とは
こんにちは。
今回は、文化遺産に求められる概念である真正性について説明します。
「旅行で文化財を見学するぐらいなのだから、真正性なんて知らん」と言われたらそれまでなのですが、世界遺産検定の受講など、一つの学問として世界遺産を学ぶ上で、非常に重要な考え方の一つが、今回のテーマの真正性です。
真正性とは
真正性とは、建物や文化財などは、それぞれの文化的背景の独自性や伝統を正しく継承していることが求められるという概念です。
例えば耐久性に優れた新素材を投入して、オリジナルの姿かたちとは別物になってしまった建造物は、真正性の考え方から逸脱してしまうため、基本的に文化遺産登録からは除外されてしまいます。
まぁ、当然と言ったら当然の考え方かもしれません。清水寺を補強するために、全面ガラス張りとか、コンクリートで作り直したら、もはや歴史的価値はありませんので。
この真正性という概念を理解するにあたり、二つの国家憲章を知る必要があります。
まず、アテネ憲章から説明します。アテネ憲章とは、文字通りギリシアのアテネで採択された憲章です。もう少し細かく言うと、1931年にアテネで開催された、第一回「歴史的記念物の建築家・技術者国際会議」にて採択された憲章で、記念物や建造物、遺跡などの保存や修理に関する基本的な考え方を明確に示したものです。
第二次大戦よりもおよそ10年前に、文化財の保全についてガイドラインを示したという意味では、先進的なものでしたが、後々に一般的になった考え方と大きく異なっていた点がありました。
それは、文化財の修復の際に近代的な技術と材料の使用を認めていたという点です。
時代は変わります。1964年、イタリアはヴェネツィアにて、第二回「歴史的記念物の建築家・技術者国際会議」が開催されました。そこで採択された国際憲章がヴェネツィア憲章です。今回も、建築物の保全や修復に関する事を目的としてますが、アテネ憲章と大きく異なる点があります。それは、遺産修復の際は、建設当時の工夫・素材を尊重することを謳った点です。
これにより、修復にあたって考古学的・歴史学的にも検証の上、オリジナルの建築物としての姿を求められる事となりました。このヴェネツィア憲章の考えこそが「真正性」の概念へと繋がりました。
なお、このヴェネツィア憲章の翌年、真正性が確立されているかを調査するための非政府機関であるICOMOS(イコモス)が誕生しました。よくニュースとかで「専門機関が調査に来て、世界遺産登録のお墨付きをもらった」とかやっている時がありますが、それはこのICOMOSの人たちです。
「1964年に誕生したヴェネツィア憲章の原則を基に、その翌年にICOMOSというNGOが発足した」という風に、セットで覚えた方が分かりやすいと思います。
奈良文書
真正性を知る上で、あと一つ理解しておきたいものがあります。それは1994年の奈良市で開催の会議において採択された、いわゆる「奈良文書」というものです。
もともと、真正性があると認められる理想の姿とは、文化財が建造されたオリジンの姿を維持・保存されているという事です。しかし、そうなると必然的に一つの問題が生じます。
それは、石の文化と木や土の文化とでは、そもそもが保存能力が異なるという点です。言うなれば、かつての真正性の考え方は、時代を経ても変化しにくい石の文化である西欧思想に基づいた考え方でありました。
その矛盾点の解決策となったのが、日本主導による奈良文書です。
奈良文書では、遺産保護は、気候や環境などの自然条件と、文化・歴史的背景などの相互関係で考えるべきと謳いました。つまり、その土地の気候風土の中で営まれてきた文化財の保存技術などを受け継いでいるものは、真正性が担保されているという考え方です。
今日、世界中の様々な文化圏において、多様かつ魅力的な文化遺産が存在しますが、これは奈良文書の採択により、真正性をより柔軟に考えられるようになったためとも言えます。
文字で読んでても分かりにくかったかもしれませんが、
「真正性の概念」「二つの国際憲章の違い」、「真正性の概念をアップデートさせた奈良文書」、真正性について最低限覚えておく点はこの3つです。
今回は以上です。